子育てと心理学の深い関係とは?「こころの仕組み」を知ると子どもとの向き合い方がやさしく変わる

子育てをしていると、「どうしてこんな行動をするんだろう」「なぜあの一言であんなに怒るんだろう」と、子どもの気持ちや行動の理由が分からず戸惑う場面がたくさんあります。こちらとしては良かれと思って言った言葉なのに、子どもが急に泣き出したり反発したりすると、親の方が傷ついてしまうこともあると思います。

そんなときに役に立つのが「心理学」という視点です。心理学と聞くと、難しい学問のように感じるかもしれませんが、子育てで必要な部分に限れば、とても実用的で、日常の声かけや接し方を少しラクにしてくれるヒントの宝庫です。

心理学は人の心の働きや行動の特徴を明らかにしようとする学問です。つまり、子どもが今どんな気持ちで、何を求めていて、どんな言葉に安心し、どんな関わり方で自己肯定感が育まれるのかを理解するうえで、とても役に立つ考え方なのです。子育ての正解をひとつ教えてくれるものではありませんが、「だからこうなっているのか」と納得できる枠組みをくれることで、親の不安やイライラを和らげてくれる力があります。

ここでは、子育てに役立つ心理学のエッセンスを、できるだけやさしい言葉で紹介していきます。難しい専門用語ではなく、今日から使える小さな視点として読んでいただければと思います。

愛着形成という「こころの土台」を知る

子育てと心理学の話をするときに、まず外せないのが「愛着」という考え方です。愛着とは、子どもが特定の大人に対して抱く強い情緒的なつながりのことを指します。多くの場合、その相手は主な養育者である親です。

赤ちゃんは生まれたばかりのころ、自分では何もできません。お腹がすいた、おむつが気持ち悪い、抱っこしてほしい、眠れない。そうした不快感を泣くことでしか伝えられない中で、その泣き声に応えてくれる存在がいると、「この人は自分のことを分かってくれる」「この人と一緒なら安心できる」という感覚が少しずつ育っていきます。これが愛着形成です。

愛着が安定している子どもは、外の世界に対しても安心して一歩を踏み出しやすくなります。たとえば、幼稚園や保育園で最初は不安そうでも、「お母さんは必ず迎えに来てくれる」「家に帰れば安心して甘えられる」という感覚が心の中にあることで、新しい環境にも少しずつ慣れていくことができます。

ここで大切なのは、「いつでも完璧に応えてあげなくてはいけない」という意味ではないということです。心理学では、「だいたいでいいから、繰り返し応えてもらえること」が重要だと考えられています。忙しくてすぐに抱っこできない日があったり、イライラして冷たい言葉をかけてしまう日があったりしても、長い時間の中で見ると、親が一生懸命に向き合おうとしていれば、子どもの中にはしっかりと「自分は大切にされている」という感覚が育っていきます。

愛着は、特別なことをしないと築けないものではありません。抱っこする、目を見て笑いかける、名前を呼ぶ、話しかける、困ったときにそばにいる。そうした何気ない日常の積み重ねが、子どもの心の土台になっていきます。

自己肯定感と「ほめ方・叱り方」の心理学

子育ての本や記事でよく出てくる言葉に「自己肯定感」があります。心理学的に言えば、自己肯定感とは「自分は自分でいていい」「できることもできないことも含めて、そのままの自分に価値がある」と感じられる感覚のことです。

自己肯定感がある子どもは、失敗しても立ち直りやすく、チャレンジすることを怖がりにくい傾向があります。反対に、自己肯定感が低いと、ちょっとしたミスでも「やっぱり自分はダメだ」と感じてしまい、新しいことに挑戦する前からあきらめてしまうことが増えます。

では、子どもの自己肯定感はどのように育つのでしょうか。ここで大きな役割を果たすのが、親の「ほめ方・叱り方」です。

心理学の視点から大切なのは、「存在そのもの」と「行動」を分けて考えて声をかけることです。たとえば、テストで良い点を取ったときに、「いい点数だったね。よく頑張ったね」と努力や行動を認める声かけは、子どもにとってプラスの経験になります。一方で、「良い点じゃないと価値がない」「結果が全て」というメッセージになってしまうと、子どもは「できたときだけ愛されている」と感じてしまう危険があります。

叱るときも同じです。「あなたはダメな子だ」と人格を否定するような叱り方ではなく、「この行動は困る」「こうされると悲しい」と、あくまで行動に焦点を当てて伝えることで、子どもは「自分の存在」ではなく「やったこと」が注意されているのだと理解しやすくなります。

本当は親だって完璧にできるわけではありません。感情的になってきつい言葉が出てしまう日もあります。それでも、あとで「さっきの言い方はきつかったね、ごめんね」と一言添えたり、「あなたのことは大好きだよ」と伝えたりすることで、「存在そのものは大事にされている」というメッセージを挽回することはできます。心理学は、完璧な親になることを求めているわけではなく、むしろ「多少の失敗は修復ができる」と教えてくれる、少しやさしい学問でもあります。

子どもの問題行動の裏側にある「満たされない気持ち」

心理学では、子どもの問題行動を「困った子ども」としてだけ見るのではなく、「何かを伝えようとしているサイン」として捉えようとします。たとえば、わざと物を投げる、乱暴な言葉を使う、下の子をいじめる、家では荒れているのに外では良い子でいるなど、表に出てくる行動だけを見ると親としてはとても戸惑います。

しかし、その行動の裏側には「かまってほしい」「話を聞いてほしい」「認めてほしい」「不安でたまらない」など、満たされていない感情が隠れていることが多くあります。自分でも言葉にできないモヤモヤを、行動で表現してしまっていると考えることもできます。

心理学的な視点からは、「行動そのものにはきちんと制限をかける」「感情そのものは否定しない」というバランスが大切だと言われます。たとえば、「叩くこと」「物を壊すこと」は止めなくてはいけませんが、「怒っていること」「悲しいこと」「寂しいこと」といった感情自体は、親が受け止める必要があります。

「そんなこと思っちゃダメ」「その気持ちはおかしい」と感情自体を否定してしまうと、子どもは自分の気持ちを自分で感じることに不安を覚え、言葉にするのが苦手になってしまうことがあります。一方で、「そんなに嫌だったんだね」「そう感じたんだね」と気持ちを一度受け止めたうえで、「でも叩くことはダメなんだよ」と行動のルールを伝えると、子どもはだんだん「気持ちは分かってもらえるけど、やっていいことと悪いことはある」と学んでいきます。

問題行動に振り回されてヘトヘトになる日もあると思いますが、「この子は何を訴えようとしているんだろう」という問いを心の片隅に置いておくだけでも、対応の仕方や見え方が少しずつ変わってきます。

発達段階を知ると「期待しすぎ」が少し減る

心理学には「発達心理学」という分野があり、子どもの年齢ごとの心と行動の特徴を研究する領域があります。発達段階を知ることは、親にとっても大きな助けになります。なぜなら、「今のこの姿は、この年齢ならむしろ自然なことなんだ」と分かるだけで、必要以上に落ち込んだり焦ったりしなくて済むからです。

たとえば、二、三歳ごろに見られる「イヤイヤ期」は、多くの親が頭を抱える時期です。しかし心理学的には、これは「自我の芽生え」とも呼ばれる、とても大事な成長の一歩です。「自分でやりたい」「自分で決めたい」という気持ちが出てくるからこそ、親の言うことに反発するようになります。

このときに、「何でもかんでも親の言う通りにする従順な子」が良い子だと考えてしまうと、子どもの成長のサインを叱りつけて押さえ込むことになってしまいます。一方で、「ああ、この『イヤ』は自分を持ち始めた証拠なんだな」と知っていれば、「全部は叶えられないけれど、選べるところは子どもに選ばせてみよう」といった工夫が生まれます。

小学生になると、心理学では「仲間との関係」が非常に大きなテーマになってきます。友達とのトラブルや仲間はずれの悩みは見ていてつらいものですが、自分以外の誰かと関わることで「相手の気持ちを想像する力」「自分の気持ちを調整する力」が少しずつ育っていきます。

思春期になると、親より友達や外の世界に心が向かい、「うるさい」「ほっといて」と反抗的な態度が出ることもあります。心理学的には、親から少し距離を取りながら、自分という存在を探していく大事なプロセスだと捉えられています。「どうしてこんなに反抗ばかりするの」と表面だけを見ると腹立たしさが勝ちますが、「この子なりに自分の足で立とうとしているんだ」と分かると、距離の取り方も少し変わってきます。

発達段階の特徴を知ることは、「過度な期待を手放す」ことにもつながります。「この年齢の子にここまで求めるのは、ちょっとハードルが高すぎるかもしれない」と気づけるだけでも、親のイライラは少し減ります。心理学は、子どもの味方であると同時に、親の味方にもなってくれるのです。

親自身の心の状態も子育ての一部という考え方

心理学が教えてくれる大切な視点に、「親の心の状態も子育ての一部」という考え方があります。子どもの行動ばかりに気を取られていると忘れがちですが、親だってひとりの人間です。疲れる日もあれば、落ち込む日もあります。自分の親との関係が心のどこかに引っかかっていて、「あのときのようになりたくない」と無意識に力が入りすぎてしまうこともあります。

心理学では、親の「育ってきた背景」や「価値観」「不安の傾向」が、子育ての場面に反映されることがよくあると考えます。たとえば、自分が子どものころ厳しく育てられてきた人は、無意識のうちに同じような叱り方をしてしまうことがあります。逆に、親が全く干渉しない育て方だった場合、自分は「絶対に同じようにはなるまい」と考えて、過剰に手を出しすぎてしまうこともあります。

こうした「自分の中のパターン」に気づくことは、決して悪いことではありません。むしろ、「なぜ自分はこの場面でこんなにイライラしてしまうんだろう」「どうしてこの言葉にこんなに反応してしまうんだろう」と立ち止まって振り返ることは、子どもを責めるのではなく、自分を理解するための大事な作業です。

心理学は、「親の心もケアされるべきだ」と教えてくれます。親がずっと我慢し続けて限界を超えてしまえば、子育てどころではなくなります。ときには誰かに話を聞いてもらう、専門家に相談する、自分の時間をあえて確保する。それらは「わがまま」ではなく、「子どものためにも親が自分を守る行動」です。

親の心が少し落ち着けば、子どもに向ける目や言葉も自然とやわらかくなっていきます。自分を責め続けるのではなく、「ここまでよく頑張ってきたな」と自分自身にもやさしい目を向けることが、結果的に子育て全体をあたためていきます。

心理学は「正解」を押しつけるものではなく、選択肢を増やすための道具

最後に、子育てと心理学の関係で忘れてはいけないのは、「心理学は正解をひとつ教えるためのものではない」ということです。子育ては家庭の数だけスタイルがあり、子どもの数だけ個性があります。心理学の「理論」や「法則」は、あくまで多くの人に共通して見られた傾向をまとめたものであり、それをそのまま自分の家に当てはめる必要はありません。

大切なのは、「こういう考え方もあるんだな」「この視点で見ると、今の状況を少し違う角度から眺められるかもしれない」と、選択肢を増やすために心理学を使うことです。全部を取り入れる必要も、すべて鵜呑みにする必要もありません。自分と子どもに合いそうなものを、少しずつ試してみれば十分です。

たとえば、愛着の話を知ったからといって、明日から完璧な笑顔で四六時中子どもに寄り添わなくてはいけないわけではありません。「少し疲れているときは、短時間でも密度の濃いスキンシップを意識してみよう」「寝る前だけは目を見て話を聞こう」など、自分のできる範囲で取り入れていけば良いのです。

心理学は、子どもの心と親の心をつなぐ「地図」のようなものです。その地図があれば、迷子になったときに「今どのあたりにいるのかな」と確認でき、「このルートはしんどいから別の道を試してみよう」と発想を切り替えることができます。子育ての山道を、少しだけ歩きやすくしてくれる道具だと考えてみてください。

悩みながら、迷いながら、それでも子どものことを考え続けている時点で、あなたはすでに十分に「子どもを大切にしている親」です。心理学の知識は、その頑張りにそっと寄り添うための小さな灯りのようなものです。全部を覚える必要もなく、「あ、そういえばこんな話があったな」と思い出せる部分だけでも、きっとどこかであなたと子どもを支えてくれるはずです。

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